平成16年(ワ)第16702号損害賠償請求事件
 原告 ○○○○外118名
 被告 西東京市

                準備書面(2)

 平成16年2月1日
東京地方裁判所民事第7部合B通係御中
                      原告ら訴訟代理人 弁護士 清水 勉
                          同     弁護士 増田 利昭
                          同     弁護士 関口 正人
                          同     弁護士 鈴木 雅人
                          同     弁護士 佐渡島 啓
                          同     弁護士 結城 大輔
                          同     弁護士 冨田 千鶴

原告らは,2004(平成16)年12月20日付け被告準備書面(1)について,以下のとおり
反論するとともに,被告に対して釈明を求める。

第1. 原告らの主張
1. 住民票コードについて
 (1)はじめに
    原告らが,被告「市の長に住民票コードをつけられた者である。」と主張した(訴
    状4頁3行目)ところ,被告は,「住民票コードは,住民票の新たな記載事項であ
    るにすぎず,人に対して番号を付すものではない」(3頁10〜11行目)と指摘し, 
    原告・被告の議論が噛み合わなくなっている面が窺われる。この点を共通認識に
    しておかないと,今後,原告・被告がそれぞれの主張を展開していく上で議論が
    混乱するおそれがある。そこで,以下において改めて住民票コードについて説明
    する。
 (2)本人確認情報
    確かに,市町村長は,個人を単位とする住民票を作成しなければならず(法第6 
    条1項),住民票に記載する事項のうちの1つが「住民票コード(番号,記号その
    他の符号であって総務省令で定めるものをいう。)」(法7条1項13号)である。こ
    の限りにおいては,被告の指摘は,形式的には間違いとはいえない。
    しかし,原告らの主張も,当然,住民票コードが住民票に記載される一事項であ
    ることを承知の上で行ったものであり,何も牛の烙印のように,住民ひとりひとりの
    人間の肉体に刻印するものだなどと主張しているわけではないし,そのことは訴
    状の記載を普通に読めば明らかでもある。上記の被告の指摘は,単に言葉尻だ
    けを捉えたものであり,余り生産的な議論とはいえない。
    本人確認情報とは,住民票に記載されている法第7条1号ないし3号まで(氏名, 
    生年月日,性別),7号(住所),13号(住民票コード)に掲げる事項(住民票の消
    除を行った場合には,当該住民票に記載されていたこれらの事項)を指すと規定
    されている(法30条の5・1項)が,実際にはこれらに上記5情報の変更履歴が含
    まれる。
 (3) 住民票コード
    原告らは,本人確認情報のうち住民票コードを特に問題としているわけである
    が,住民票コードが他の情報と異なる点は,他者と同一コードにならないよう割り
    振られているため,異なる複数の者に同一のコード番号が割り振られることはな
    いということである(法30条の7・2項,30条の2・2項)。したがって,行政機関にと
    って,住民票コードは他の情報に比べて,個人識別の手段として遙かに簡単で
    確実な方法である。このような住民票コードによって確実に特定の個々人の情報
    を把握することを通じて,個々人を把握するという関係が成立する。そのため,住
    民票コードは「検索キー」として極めて便利なものだと言える。
 (4)行政事務に無限に利用できる住民票コード
    住民基本台帳法では,このような特性を持った住民票コードを含む本人確認情
    報を国や地方自治体の行政事務などに広く活用できように配慮し,市町村,都
    道府県は,自らの事務処理のために本人確認情報を利用したければ条例で定
    めればよく(法30条の6,30条の7・5項参照),国の行政機関等は法律で定めれ
    ばよい(法30条の7・3項参照),としている。これにより,どのような行政事務にお
    いても条例または法律さえ制定すれば,住民票コードを含む本人確認情報を使
    うことができるものなのである。
    行政機関は多方面にわたる膨大な個人情報を保有している。
    従来は,それぞれの行政機関が各自の都合で個人データに個人を識別するた
    めの整理番号を付けていたが,住民票コードは,条例や法律によりさえすれば, 
    どのような行政事務における個人データの識別にも使えるという法制度になって
    いるので,本人確認情報によって個人データを識別管理する行政事務範囲が広
    がれば,同じ人のデータを多分野にわたって容易に検索できるようになる。特定
    の個人データを容易に検索できるということは,その人を管理しやすくなると言う
    ことに他ならない。
 (5)まとめ
    以上のように,原告らが言わんとしていることは,住民票コードが住民票に記載さ
    れているか,人に直接刻印されているかなどという記載場所の問題なのではな
    く,住民票コードの本質(個人と1対1対応であること)と機能(個人を容易かつ迅
    速に検索できる,すなわち管理できること)についてである。
    被告は住民にとって最も身近な行政機関として,国や東京都以上に,住民の
    個々人の権利利益の保護を真剣に考えて行政実務を運用すべきであり(地方自
    治法1条の2,2条14項前段),自治事務である住基ネットについてはこのことが
    当てはまる。
2. 住民票コードの特異性
 (1)一定期間の保存
    被告は,住民票コードの特異性について準備書面7頁で説明し,その中で,住
    民票コードの変更ができることに続けて,「住民票コードを変更した場合に変更
    前の住民票コードが一定期間に限って保存されること」(7頁4〜5行目)と指摘し
    ている。
    これは住基法30条の5第3項で規定している「都道府県知事」の保存期間のこと
    を指していると思われるが,被告は市であるから,当該規定の適用はない。
 (2)保存期間と個人データの連続性
    被告は,住民票コードの保存期間が定められていることから,住民票コードは永
    久に使用されるわけではないという主張をしているつもりなのかもしれないが,保
    存はむしろ連続性を意図したものである。なぜなら,新たな住民票コードで個人
    データを管理するようになれば,新たな個人データとの関係では古い住民票コー
    ドは必要なくなっているはずであり,それを一定期間保存するということは,新旧
    の個人データを結びつけるためでしかないからである。
    住民票コードおよびその変更履歴は,市町村から都道府県を経由して指定情報
    処理機関(財団法人地方自治情報センター)へと通知されるものである(法30条
    の5・1項,30条の11・1項)。確かに,指定情報処理機関においても,住民票の
    記載,修正が行われた場合には,記載・修正前の本人確認情報について,通知
    の日から5年間の保存期間等が定められている(住民基本台帳法施行令第30 
    条の11)。しかし,新たに記載・修正された本人確認情報に住民票コードおよび
    その変更履歴が記載されている以上,それより古い本人確認情報が保存期間経
    過によって廃棄されたとしても,最新の住民票コードおよびその変更履歴として, 
    住民表コードが,いわば“数珠つなぎ”に蓄積されていくだけである。そして,原
    告らが問題としているのも,まさにこの点(すなわち住民票コードの数字自体は, 
    他市町村での新規の記載や変更,修正等によってどんなに変わろうとも,全てが
    “数珠つなぎ”のように連続していくこと)なのである。
第2. 求釈明
    原告らは,原告準備書面(1)において,被告準備書面(1)に関する求釈明を行
    ったが,さらに以下の事項について,釈明を求める。
1.  被告は,「改正法の廃止に向けた努力をしていないことは認めるが,これは,その
    必要がないからである」(6頁25〜26行目)と主張しているが, 
  〔求釈明事項@〕
    住基ネットが,西東京市および西東京市民にとってどのようなデメリットがあるかを
    独自に検討したことがあるか?。検討したことがあるとすれば,その内容を明らか
    にされたい。
  〔求釈明事項A〕
    2002(平成14)年8月前後,全国各地で住基ネットに反対する国民の声があが
    り,西東京市においても数百人の住民が住民票コードの抹消等を求める異議申
  〔求釈明事項B〕
    西東京市における住基カードの交付枚数は,2005年1月31日現在で幾枚
  〔求釈明事項C〕
    被告としては,今後,住基ネットをどのように展開する計画でいるのか?。また, 
    立を行う事態になったとき,西東京市では自治事務としての住基ネットを廃止す
    る法改正をすべきだとする議論はなされなかったか?。なされたとすれば,その
    内容を明らかにされたい。
    か?。そのうち,西東京市の職員が交付を受けているのは幾枚か?。これらの交
    付枚数は,住基ネットの法廃止を求めない西東京市の立場から見て,十分な枚
    数,あるいは予定どおりの枚数と,言えるか? 
    今後さらに多くの自治体予算をつぎ込む考えか?。
                                      以上