平成16年(ワ)第16702号
原 告 ○○○○外118名
被 告 西東京市

                 原告弁護団意見書

                            2004年(平成16年)10月25日

東京地方裁判所民事第7部合議B係  御 中

                   原告ら訴訟代理人弁護士  清  水   勉 
                                     外6名 

 住基ネット・国家賠償請求訴訟の第1回口頭弁論に際して、原告弁護団として以下のとお
り意見陳述する。

1 戦後、私たちは何を求めてきたか
 戦前は天皇を頂点とする中央集権国家、戦後は日本国憲法のもとで民主主義国家に変わっ
たと言われる。
 しかし、法制度が変わるということと、現実が変わるということは同じではない。
 敗戦直後の飢餓のなかで国民は食べられるようになることを渇望し、それが実現するよう
になると経済的に豊かになることを求めるようになった。国民は行政に対して強く平等を求
めた。全国どこでも同じような豊かな生活ができるように、という平等を求めた。それは具
体的には全国画一的な行政サービスの実現であり、そのために国は国の政策としてこれらを
推し進めるべく、補助金制度によって政策を実現して行った。
 国民はそういう社会に豊かさや発展を実感していた。

2 国民と自治体と国の関係
 だから、国民は、地域の独自性がはっきり出る地方自治を実現しようなどとは考えなかっ
た。自治体を自ら創り育てるなどという面倒なことはして来なかった。地方自治の担い手で
ある住民が地方自治を望まないのだから、地方自治が育つはずがない。行政サービスに不満
があれば、自治体に文句を言うだけの"お任せ民主主義"。自治体は、国に言われたことをや
るだけで、住民に文句を言われる筋合いではないと考える。国は、「自分のことしか考えない
国民の言うことなど聞く必要はない」「責任感のない自治体の言うことも聞く必要がない」、
と考える。そういう責任転嫁の構造こそが戦後の日本の行政である。政策決定は国が行ない、
自治体は完全に国の下請機関ということである。
 何のことはない。日本の政策決定の現実は、戦前と同じ中央集権国家だということである。
 
3 主権者としての意思表明と自治体のあるべき対応
 ところが、ここで異変が起こった。
 一昨年8月、住民票コードを記した葉書が世帯ごとに郵送された直後のことである。役所
を訪れて「私に番号をつけないでほしい」「矢祭町や杉並区のように住基ネットから離脱して
ほしい」という思いを込め、あるいは訴えて、この葉書を役所に返す住民が全国各地の市町
村で続出した。しかも、その人々は組織されていないひとりの住民として行動したのである。
一住民が行政のやることに盾を突く。「こんなことはこれまでなかった」と多くの自治体職員
が驚いた。これこそ、行政に対する主権者としての意思表明である。このような現象はそれ
までの日本社会には起こったことがなかったことである。
 原告ら西東京市の住民もこのような主権者である。
 住民が主権者として明白な意思表明をした以上、自治体はこれに真摯に対応すべきである。
西東京市が真に住民のために仕事をする組織であるなら、住民のこの意思表明を真摯に受け
止め、その内容を十分に検討し、住民の言い分に合理性があると判断するなら、実現できる
ことから実行に移してゆくべきある。それが地方自治である。
 原告らは、この裁判で自分たちの考えを主張して行く。だから、西東京市にも、総務省や
地方自治情報センターの考えではなく、西東京市長と西東京市の職員が考えていることを主
張していただきたい。
以上