声明 住基ネットを超えて、地方自治と民主主義へ 前途は多難だが、未来は明るい!  裁判所は自ら「法の番人」であることを投げ捨て、「行政の番犬」であることを宣言した。 今さらながらではあるが、今回の最高裁判決を受けての率直な想いである。  私たち西東京市民3人による「西東京住基ネット付番取消訴訟」は、2004年5月、東京地裁 に住基ネットのコード番号付番取消しを提訴した。住基ネットシステムは個人情報を漏洩の 危機に晒しプライバシーを脅かすと同時に、番号によって行政機関が国民ひとりひとりの個 人情報を一元管理することは、一過性の単なる整理番号とは根本的に異なる人格権の侵害と なりうると考えたからだ。  私たちが被告として選んだのは、国でも都でもなく、西東京市である。地方自治法では国 と自治体は対等な関係で、上下の別はないと定められている。住基ネットは法律上、「自治 事務」として市がみずからの責任と判断で行うものとされており、市は住民の権利と利益を 守るために最善の行動をとる義務と責任があるからである。基礎自治体である市と市民の間 であれば、真に住民の利益とは何かという実のあるやりとりが可能であると考えたのである。 しかし残念ながら、裁判を通じて市は国の主張をなぞるばかりで、市独自の意見を聞くこと はできなかった。住基ネットによって市の行政が効率化したという主張を具体的に立証する ことも放棄した。だがさらに奇怪なことに、一、二審判決は内容について一切言及すること なく「審理を通じて立証された」という文言をもって、一切の論証抜きで「住基ネットには 行政の効率化という正当な目的がある」と認定したのである。裁判所にとって、行政を勝た せるという結論がまずあったのではないかとさえ思わせる奇妙な判決である。私たちは、自 身が住基ネットシステムを運営する責任者であるという当事者意識をついに感じさせなかっ た市の姿勢に落胆すると同時に、いや、それ以上に、事実に基づいて真実に到達しようとい う努力を一切投げすてた、裁判所の姿に深い絶望を感じざるを得ない。  そして最高裁の上告棄却の決定文は、わずか18行。「本件上告理由は、違憲及び理由の不 備をいうが、その実質は単なる法令違反を主張するもの」であるから、上告審で扱わないと いう短いものであった。「コード付番は国民の権利義務が発生する行政処分ではなく行政訴 訟の対象にならない」という一、二審の判決はこれで確定した。西東京市も東京都も総務省 も、住基ネット付番は行政処分であることを一度として否定してこなかったのに、この判決 を是として受け入れるのであろうか。裁判を通じて、「住基ネット付番が行政処分でない」 ことの論証などまったく行われていないのに。  確定判決によれば、住基ネットの11ケタのコード番号は単なる整理番号に過ぎないから、 それにかんして住民は裁判所に訴える権利はないという。「単なる整理番号」にわざわざシ ールをつけて通知したり、本人以外には知らせないようにしているのはなぜだろう。判決は 何も答えていない。しかし私たちには、そうした疑問を法的に問う手段さえないというので ある。何ということだろう。  この裁判での住民敗訴は確定した。しかし確定判決によっても、住基ネットの安全性は何 ら立証されたわけではないことを忘れてはならない。莫大な予算を投じた費用対効果はどう なっているのか、本当に行政の効率化に貢献しているかなど、さまざまな問題はなお検証も されず放置されている。私たち3名を含む124名の西東京市民が提訴したもう一つの訴訟「国 家賠償請求訴訟」も、なお東京地裁で審理が続いている。私たちは今後も住基ネットを監視 し続けることによって、地方自治は誰のためのものなのかを問いたい。そして、住民、地方 自治体、国の三者の関係によってかたちづくられる民主主義のありようを明らかにしたい。 前途は多難だが、未来は明るい! 2007年6月15日 西東京・住基ネット付番取消訴訟原告団