2004年9月21日

      住基ネット住民票コード付定処分取消し訴訟意見陳述文

 原告の柳田由紀子です。私は西東京市柳沢に31年間住み、自宅で子ども達の勉強をみ
ている者です。裁判に先立つ異議申し立て及び審査請求では総代の1人を務めました。本
件訴訟について、私の意見を述べさせていただきます。

 まず、住基ネットの住民票コード付定の取消しを求める本件訴訟は、原告3名で提起し
ましたが、単にこの3名だけがこの行政処分に不服なのではない、ということをお伝えし
たいと思います。
 「住民票コード番号を取り消してほしい、住基ネットの接続は止めてほしい」と西東京
市に対して597名が異議申し立てを行いました。更に東京都に対して495名が審査請
求を行いました。「棄却」という結果になり、これには皆納得できないと思っています。
 しかし、更に進んで裁判の原告になるのは、これはまた決断を要することです。
 形式上とはいえ市長を被告とする裁判の原告になるのは精神的に負担であったり、ある
いは訴訟費用が経済的に負担であったりなどの理由で、裁判には二の足を踏んだ市民がか
なりいました。そのため、代表的に私共3名が原告になりました。
 
 では、住基ネットの住民票コード付定になぜ納得できないか、私に付けられた番号をな
ぜ取り消してほしいのか、一市民の思いをお話いたします。
 
 私は1999年の改正住基法成立時には、番号で管理されることに抵抗感を抱きつつも、
本人確認情報として利用されるのはたかが住所・氏名・年齢・性別なら、困るようなこと
はないのではないかという程度の認識しかありませんでした。
 しかし、2000年に自分でパソコンを使い始めてみると、情報入手や処理の利便性を
享受する一方で、電子的個人情報は漏えいの危険に常に晒されているということ、コンピ
ュータは情報を短時間に大量処理することから危険に晒される量も範囲も膨大になること
が実感として分かってきました。

 2002年8月5日に住基ネット第1次稼働が始まり、私の家にも市から住民票コード
の通知葉書が届きました。今ここにいらっしゃる方々も、日本国籍があって住民登録をさ
れている方は、登録先の自治体から同じように通知書を受け取られたと思います。
 私は通知書を開封しませんでしたが、住民票コードを自分に付けられたことを知ったこ
とで、自分が今後、一人の人間としてではなく、一つの番号として管理されるようになる
ことをはっきり自覚させられて、とても不快でした。
 物の管理のためにコンピュータを使って事務処理の効率化を図ることを否定しませんが、
効率化のために人間に番号をつけて管理の対象とすることは個人の尊重に反するものです。
製造物の管理や牛につけられる10桁の番号は「物や動物」を管理する人間の都合でつけ
るものです。住基ネットの11桁のコードは「人間」を生涯にわたって管理するために行
政の都合でつける番号です。
 番号による管理は、番号が主で番号をつけられた人間は従となります。番号の主(ヌシ)
はその存在が番号の背後に押しやられてしまいます。番号による管理は、事務の対象とな
る個人一人一人が生身の人間であることを忘れさせてしまいます。
 しかも、管理対象になることを個人として拒否できない住基ネットの制度は、拒否権と
いう人間の自由をも奪うものです。市民的自由を侵害するものです。このような制度は到
底納得できません。
 
 また、住民票コードは単なる整理番号ではないため、プライバシーが侵害されるおそれ
があります。
 行政では個々の事務処理のために整理番号をつけています。例えば、納税通知書には8
桁の通知書番号がついています。国民健康保険証は2桁の数字2種の組み合わせの記号と
4桁の番号が記載されています。これらは、それぞれの業務に限定された番号で、納税者
が変わったり転居するなど状況の変化に応じて番号も変わります。
 しかし住民票コードは全く性格が違います。個人識別の番号として、いろいろな行政業
務の本人確認に利用しようというものです。しかもコンピュータ処理のためのものですか
ら、住民票コードという共通番号がマスターキーになり、検索により、様々な情報が無限
定に名寄せされる危険性があります。電子情報における個人情報保護体制に不備がある場
合は、個人情報が漏えいし、プライバシーが侵害される恐れがあります。
 そうなると電子化社会では、住基ネットはたかが6情報、とはいえなくなってきます。
 
 西東京市は、国にしろ、東京都にしろ西東京市を含む行政機関は誰のために何のために
あるのかということを思い起こしてほしいと思います。個々の人間という存在があって、
人間生活に不可欠な自由・生命・財産を人間固有の権利としてもっており、その権利を保
障する仕組みとして行政機関があるのですから、行政機関はその権利を侵害するような行
き過ぎた管理をしてはならないと思います。また、プライバシーの侵害を招くような事務
処理体制を作ってはならないと思います。
 
 私は17名の市民とともに、通知葉書を助役に返却しましたが、返却しても番号はなく
なりません。行政機関が住民の権利侵害を不問にして番号を取り消さないならば、司法の
場で、違法性を問うしかありません。
 現在、本件訴訟に続いて西東京市民119名が国賠訴訟を提起して、住基ネットの違法
性を問うています。
 二つの裁判を通して、私たちは、市民にとっても自治体にとっても住基ネットはいかに
有害無益であるかを明らかにし、住基ネットがない「幸福な市民生活」が1日もはやく実
現できることを願っています。