平成16年(行ウ)第217号,第250号,第251号
住民票コード付定取消請求事件
原 告 ○○○○ほか2名
被 告 西東京市長

             準備書面(7)

                    平成17年11月15日

東京地方裁判所民事第38部合A1係 御中

              被告指定代理人
                    榮   岳 夫
                    川 島 喜 弘
                    宮 崎 雅 子
                    宮之下 信 一
                    石 坂 浩 二
                    下 屋 和 孝
                    大 川   強
                    管 野 照 光
                    岡 村 保 彦
                    早 川 礼 成

 被告は,本準備書面において,原告ら準備書面(6)における請求の趣旨の変更に
係る主張に対して反論するとともに(後記第1),原告ら準備書面(4)及び同(5)に
おける主張に対し,必要と認める限度で反論する(後記第2,第3)。
 なお,略称等は,本準備書面において新たに用いるもの以外は,従前の例による。
また,原告ら準備書面(4)において,「被告西東京市」あるいは「被告」とあるの
は,すべて「西東京市」を指すものであって,本件の被告を指すものでないことを
前提として反論する。

第1 本件における「請求の趣旨の変更」が訴えの変更にほかならないこと
 1 原告らは,原告ら準備書面(6)第1(2ページ)において,訴状の請求の趣
  旨を「被告が2002年(平成14年)8月5日付けでした各原告の住民票コ
  ードを選択し,これを住民票に記載した処分を取り消せ。」と変更するととも
  に,この処分の根拠条文が改正法附則3条であると釈明する。
   そして,原告らは,「本件提訴後の経過から明らかなように,原告らが請求
  の趣旨を上記第1のように特定したことは,請求の趣旨の中心的な内容をなす
  取消請求の対象となる処分を具体的にどの事実とするか,その場合,当該処分
  の根拠条文を何に求めるかが一義的に確定しなかったことによるものであり,
  訴えの変更には当たらない。」と主張する(原告ら準備書面(6)第2の2(2
  ページ))。
 2 しかし,行政事件訴訟を含む民事訴訟は,原告と被告の間で争われている原
  告の権利主張の当否を審判することを目的とするものであるから,訴状では,
  審判の対象である請求(訴訟物)を,請求の趣旨及び原因により特定しなけれ
  ばならない(行政事件訴訟法7条,民事訴訟法133条2項)。
   そして,「抗告訴訟の請求の趣旨は,不服の対象とする公権力の行使を,処
  分等の成立日時,処分名又はその内容などによって特定した上で,それについ
  て求める裁判の内容(中略)を簡潔に記載する方法によるのが一般的である」
  とされている(司法研修所編・改訂行政事件訴訟の一般的問題に関する実務的
  研究44ページ)。
 3 これを本件についてみると,そもそも訴状における請求の趣旨は,被告が原
  告らに対して行った「住民票コード付定」の取消しを求めるというものであり,
  上記のような意味における請求(訴訟物)の特定が不十分といわざるを得ない
  内容であった。
   しかし,原告らは,裁判所からの求釈明に対し,原告ら準備書面(1)におい
  て,この「住民票コード付定」とは,被告が平成14年7月20日ころまでに,
  各原告の住民票コードを選択し,住民票に記載したことを指す旨を釈明したも
  のであり,本件各訴えにおける請求(訴訟物)は,この時点において,被告が
  改正法附則7条に基づく準備行為として行った住民票コードの選択,記載行為
  (本件準備行為)の取消しを求めるものに特定されたというぺきである。
   しかるに,原告らは,原告ら準備書面(3)及び同(6)において,本件準備行為
  と同一性のない改正法附則3条に基づく住民票コードの選択,記載行為の取消
  しを求める旨の請求の趣旨の変更を申し出たものであり,これは訴えの変更に
  ほかならないというべきである(被告準備書面(6)4,5ページ)。
 4 原告らは,訴状においては,「取消請求の対象となる処分を具体的にどの事
  実とするか」,「当該処分の根拠条文を何に求めるか」が一義的に確定しなか
  ったから,上記1の請求の趣旨の変更は,訴えの変更には当たらないなどと主
  張する。
   しかし,そもそも処分の内容を成す具体的事実等が特定されていない訴状は,
  請求(訴訟物)の内容が特定されておらず,直ちに却下されるべきものである
  (民事訴訟法137条2項)。原告らの上記主張は,必要的記載事項の特定を
  欠く訴状によって提起された訴えが適法なものとして存在し得るという誤った
  認識を前提とするものであり,失当というべきである。
   ましてや,原告らは,原告ら準備書面(1)において一度特定した処分の内容
  を,原告ら準備書面(3)及び同(6)において変更したものであり,その変更内容
  が誤記の訂正程度にとどまるものでないことは明らかであって,これが訴えの
  変更に当たることには疑問の余地がない。
 5 そして,上記の変更後の各訴えは,出訴期間経過後に提起されたものである
  ことは明らかであるから,いずれも不適法であり,速やかに却下されるべきで
  ある。なお,改正法附則3条に基づく住民票コードの選択、記載行為の処分性
  については,これを否定した裁判例もある(名古屋高裁金沢支部平成17年2
  月23日判決・公刊物未登載)(被告準備書面(6)5,6ページ)。

第2 原告ら準備書面(4)に対する反論
 1 はじめに
   原告らは,被告が平成14年8月5日付けでした各原告の住民票コードを選
  択し,これを住民票に記載した行為(以下「本件各行為」という。)について
  (原告ら準備書面(4)2ページ),「被告西東京市が住民一人一人の識別用とし
  て住民票(住基法7条)に全国民全てと異なる数字である『住民票コード』を
  選択し,記載すること,これにより,住民票コードを含む本人確認情報(6情
  報)を市町村の権限内である既存住基サーパ,住基ネット専用CSサーバ内に
  止めることなく,その外側である東京都のサーバに送信し,さらには指定情報
  処理機関(地方自治情報センター)へと送信するということは,原告らの人格
  権およびプライバシー権を著しく侵害する」と主張するとともに(同準備書面
  2ページ),具体的な問題点として,@「住基ネットには,そもそも正当な行
  政目的がない」こと,A「アーキテクチャ選択のミス」があること,B「被告
  西東京市の責任範囲を超える選択」がされたこと,C「個人データ保護の困難
  性」があること,D「費用対効果」に問題があること,E「被告西東京市の住
  民に対する説明責任」が果たされていないことを指摘する(同準備書面13な
  いし16ページ)。
   しかし,そもそも原告らの上記主張は,どのような意味で本件各行為の処分
  取消事由となるのかが不明である上,住民票コードの選択・記載や本人確認情
  報の通知によって原告らの人格権及びプライバシー権は侵害されないから,い
  ずれにしても,原告らの上記主張はいずれも失当であることが明らかである(後
  記2)。
 2 住民票コードの選択・記載や本人確認情報の通知によって原告らの人格権及
  びプライバシー権が侵害されるものでないこと
  (1)はじめに
    そもそも原告らが主張する人格権及びプライバシー権の概念,内容は不明
   確であること,この点をおくとしても,住民票コードの選択・記載や本人確
   認情報の通知によって原告らの人格権及びプライバシー権が侵害されるもの
   でないことは,被告準備書面(1) 10, 11ページにおいて主張したとおり
   である。
    この点について,原告らは,原告ら準備書面(4)において,人格権及びプ
   ライバシー権の侵害がある旨をるる主張するが,以下に述ぺるとおり,いず
   れも失当というべきである。
  (2)「住基ネットには,そもそも正当な行政目的がない」との主張について
    原告らは,住基ネットには,そもそも正当な行政目的がないと主張する(原
   告ら準備書面(4) 13ページ)。
    しかし,上記主張は,人格権及びプライバシー権の存否やその侵害とは何
   ら関連がない。
    この点をおくとしても,住基ネットは,国及び地方公共団体を通じた行政
   の効率化・合理化を図るとともに,行政手続における住民の負担軽減,住民
   サービスの高度化等により住民の利便を増進するため,地方公共団体の共同
   のシステムとして,各種行政の基礎であり居住関係を公証する住民基本台帳
   のネットワーク化を図り,本人確認情報により全国共通の本人確認ができる
   仕組みを構築し,また,市町村の区域を越えた住民基本台帳に関する事務の
   処理を行うための体制を整備し,併せて住民の本人確認情報等を保護するた
   めの十分な措置を講じようとするものであり,これが正当な行政目的を有す
   るものであることは明らかである。
  (3)「ア一キテクチャ選択のミス」があるとの主張について
   ア 原告らは,「データそのものがネットワーク内を流通する」アーキテク
    チャを「流通型アーキテクチャ」と,「データの中でも絶対に流出が許さ
    れないデータ(クリティカル・データ)は,ネットワークに接続されてい
    ない内部セグメント上に構築されたサーバ内で処理する」アーキテクチャ
    を「隔離型アーキテクチャ」と名付けた上で,広域的な行政サービスの提
    供は,既存住基のシステムに基づき,「隔離型アーキテクチャ」を選択す
    ることによって果たすことが十分可能である一方,住基ネットが採用する
    「流通型アーキテクチャ」は,個人データ流出の危険が「隔離型アーキテ
    クチャ」よりも格段に高く,手段としての適合性がないと主張する(原告
    ら準備書面(4)9ないし14ページ)。
   イ しかし,広域的な行政サービスの提供は,既存住基のシステムに基づき,
    「隔離型アーキテクチャ」を選択することによって果たすことが十分可能
    であるとの主張は,人格権及びプライバシー権の存否やその侵害とは何ら
    関連がない。
     この点をおくとしても,原告らが主張するような方法によって住基ネッ
    トと同様の本人確認を行うためのシステムを構築することには,以下に述
    べるような難点がある。
     すなわち,上記のようなシステムにおいて本人確認を行おうとする場合
    には,まず,外部機関(要求元)から市町村に対し,本人確認を行おうと
    する者の氏名や住所等の個人データを送信し,次に,市町村において,受
    信した個人データを保有する個人データと照合した結果を外部機関に回答
    することとなるが,氏名については同姓同名の者が存在したり,異体字が
    使用されている場合があること,住所についても地番や部屋番号の表記の
    仕方が複数あり得ることから,これらの情報を用いただけでは,誤った本
    人確認を行ったり,本人確認ができなかったりする可能性が残ることとな
    る。
     また,前記(2)に記載した多様な行政目的を達するためには,市町村ご
    とに設けられた識別番号を用いて照合を行うだけでは不十分であり,全国
    を通じて重複することのない住民票コードをあらかじめ個々の住民の住民
    票に記載しておき,この住民票コードを含む本人確認情報を用いて本人確
    認を行うという,住基ネットのような仕組みを採用する必要があるものと
    いうぺきである。
   ウ 住基ネットが採用するアーキテクチャは,個人データ流出の危険が格段
    に高いものであるとの主張は,以下に述ぺるとおり,事実に反する。
     すなわち,仮に,既存住基のシステムに基づき,「隔離型アーキテクチ
    ャ」を選択する方法によって住基ネットと同様の本人確認を行うためのシ
    ステムを構築することが可能であるとしても,このシステムを用いて本人
    確認を行う際には,外部機関(要求元)から市町村に対し,本人確認を求
    めようとする者の個人データを送信しなけれぱならないのであって,外部
    機関との間で個人データをやりとりすることは,住基ネットを用いて本人
    確認を行う場合と何ら異なるものではない。原告らは,個人情報自体を秘
    密鍵として取り扱うことができるかのように説明するが(原告ら準備書面
    (4) 12ページの図2参照),一般に,秘密鍵は,ICカード等による認
    証や通信の暗号化に使用されるものであり,業務において使用する情報自
    体を秘密鍵として取り扱うことができるものではない。
     また,住基法は,本人確認情報の内容を一定範囲に限定した上で(同法
    30条の5第1項),当該情報の提供を受けることができる行政機関の範
    囲,事務処理ないし利用の範囲及び手続を法(政令等を含む。)に定める
    ほかは条例により定めることとし(同法30条の6,30条の7,30条
    の8),その利用を制限して目的外利用を禁止したほか(同法30条の3
    0,30条の34),本人確認情報の適切な管理,記録の保護等(同法3
    0条の29,30条の33,30条の36),自己に係る本人確認情報の
    開示請求権(同法30条の37),住民票コードの利用制限(同法30条
    の42,30条の43)その他の本人確認情報の保護措置を定め,住民票
    記載事項の安全確保措置を義務付ける一方,広く本人確認情報の操作者等
    に守秘義務を課し(同法30条の17,30条の31,30条の35),
    違反者には刑罰を科すこととしている(同法42条)。また,住基ネット
    自体は,専用回線で接続し,操作者の厳重な確認やコンピュータの相互確
    認,情報の暗号化等を行っている。以上のとおり,住基ネットについては,
    必要な個人情報保護措置は講じられているというべきであり,本人確認情
    報について漏えいの危険性はないものというべきである。
  (4)「被告西東京市の責任範囲を超える選択」がされたとの主張について
   ア 原告らは,西東京市は,その住基ネット専用CSから送信された住民の
    個人データを管理すべき立場にあるにもかかわらず,現行の住基ネットの
    仕組みにおいては,このような管理を行うことができないと主張する(原
    告ら準備書面(4)2ないし4,8,9,13,14ページ)。
   イ しかし,被告が,住基法30条の5第1項及び改正法附則7条という明
    文の規定に基づき,自己が保有する本人確認情報を東京都知事に通知した
    後の本人確認情報については,東京都知事が住基法,個人情報保護条例等
    に従って,これを国の機関等に提供し,かつ,その保護を図るべきものと
    されている。したがって,被告ないし西東京市が通知後の本人確認情報に
    ついて,原告らが主張するような「管理」の責任を負うものではない。
     また,住基ネットについて必要な個人情報保護措置が講じられているこ
    とは,前記(3)ウにおいて主張したとおりであるから,上記通知後の本人
    確認情報についても漏えいの危険性はないものというぺきである。したが
    って,被告が東京都知事に本人確認情報を通知したことによって,原告ら
    の人格権及びプライバシー権が侵害されたと認める余地もないことが明ら
    かである。
   ウ なお,原告らは,「住基ネット専用CSを出て,都道府県サーバ,地方
    自治情報センターのCSへと送信されてしまったデータは,それがどのよ
    うに管理,利用されるかについて,市町村は全くチェックすることができ
    ない。」などと主張するが(原告ら準備書面(4)8ページ),市町村長は,
    必要に応じ,国の機関等,区域内の市町村の執行機関等,都道府県知事及
    ぴ都道府県の執行機関に対し,「都道府県知事又は指定情報処理機関が提
    供を行った当該市町村の住民に係る本人確認情報の適切な管理のための措
    置の実施状況について報告を求め,当該本人確認情報の適切な管理のため
    の措置の実施について要請を行うこと」ができるのであって(技術的基準
    第6−8(1)エ,(2)イ及び(4)イ。乙第1号証),原告らの上記主張は失
    当である。
     また,原告らは,住基法30条の37によって,市町村が都道府県ない
    し地方自治情報センターに対し.本人確認情報の利用状況を照会する権限
    が否定されていると主張するようであるが(原告ら準備書面(4)8ページ),
    住基法30条の37は,住民が自己の本人確認情報の開示を求める場合に
    ついて規定しているものであり,市町村の権限について何ら規定するもの
    ではない。そもそも,通知後の本人確認情報の提供や保護は,都道府県知
    事がその責任において行うべきものであることは,前記イにおいて述べた
    とおりである。その上,都道府県知事は,自己に係る本人確認情報の提供
    又は利用の状況に関する情報の開示請求に適切に対応するため,個人ごと
    の本人確認情報の提供又は利用の状況に係る情報を必要な期間保存するこ
    ととされ(技術的基準第6−8(5)),しかも,それぞれの個人情報保護
    条例に基づき上記情報の開示請求を行うことが可能であり(住民基本台帳
    事務処理要領第6−5 (3),乙第5号証),住民に対する利用状況の開示
    が保障されているから,これに重ねて市町村が利用状況を照会することを
    認める必要性は高くないというべきである。
     さらに,原告らは,「市町村の住基ネット専用CSを出て,都道府県サ
    ーバ,地方自治情報センターのCSへと送信されてしまったデータ」につ
    いて,市町村は,これを「自ら修正する権限も有していない」と主張する
    が(原告ら準備書面(4)8ページ),住基ネットシステムを稼働するため
    のアプリケーションにおいては,本人確認情報の修正は,市町村において
    のみ行う仕組みになっており,都道府県ないし地方自治情報センターが,
    市町村に無断で本人確認情報を修正することができるものではない。
  (5)「個人データ保護の困難性」があるとの主張について
     原告らは,住基ネットシステムにおいて保有する住民票コードを含む本人
    確認情報について,漏えいの危険性があると主張するようである(原告ら準
    備書面(4)14,15ページ)。
     しかし,住基ネットについて必要な個人情報保護措置が講じられており,
    本人確認情報について漏えいの危険性はないものというべきことは,前記(3)
    ウにおいて主張したとおりであり,原告らの上記主張は,抽象的な漏えいの
    おそれを指摘するにすぎない。
  (6)「費用対効果」に問題があるとの主張について
     原告らは,住基ネット上の個人データを保護する費用について,「費用対
    効果のバランスがとれることを確認した上で,住基ネットの採用ないし稼働
    に取り組むべき」であると主張する(原告ら準備書面(4)4ないし6,15
    ページ)。
     しかし,そもそも上記主張は,人格権及びプライバシー権の存否やその侵
    害とは何ら関連がない。
  (7)「被告西東京市の住民に対する説明責任」が果たされていないとの主張に
   ついて
   ア 原告らは,西東京市は,原告らに対し,住基ネット稼働の際に,「住基
    ネットの行政目的を明らかにした上で,住民票コードをつけることとその
    意味,住基ネットの構造,市町村の法的責任,財政負担など,住基ネット
    に関する重要な事項について」説明すべきであったと主張するようである
    (原告ら準備書面(4)15 ,16ページ)。
     しかし,そもそも上記主張は,人格権及びプライバシー権の存否やその
    侵害とは何ら関連がない。
     この点をおくとしても,以下のとおり,西東京市は,住基ネットの第1
    次稼働前に,市民への周知を行っている。
   イ 西東京市は,住基ネットの第1次稼働について総務省が作成したパンフ
    レット等を市民課の窓口に置いて希望者に配布するとともに,平成14年
    5月15日付け市報(乙第6号証),同年8月1日付け市報(乙第7号証)
    及び西東京市ホームページ(乙第8号証の1ないし3)において,住基ネ
    ットの第1次稼動に関する記事を掲載した。
     また,西東京市は,平成13年2月ころから,市民から住基ネットに関
    する質問や意見等を受けるようになり,同年4月から平成14年9月まで
    の間に,約300件あまりの住基ネットに関する質問や意見等を受けたが,
    西東京市の職員は,これらの質問,意見等に対し,できる限り分かりやす
    く,市民の理解を得られるような対応を行った。
     さらに,西東京市は,平成14年7月19日付けで西東京市のセキュリ
    ティ基本方針を決定し,同年8月15日付け市報において,これに関する
    記事を掲載するとともに,情報セキュリティポリシーについては西東京市
    ホームページで公開した(乙第9号証の1,2)。
第3 原告ら準備書面(5)に対する反論
 1 原告らは,被告が平成14年8月5日に,各原告の住民票コードを選択し,
  住民票に記載したことによって,住基法3条1項所定の「適正管理義務」を実
  行することが困難な状況となり,原告らの個人情報ないし本人確認情報が侵害
  される現実的な危険性が高まったものであり,上記行為こそが,原告らにとっ
  て重大な利益侵害が発生する決定的な原因であり,違法な行政処分に当たると
  主張する(原告ら準備書面(5)第3(9ページ))。
 2 しかし,住基ネットは,必要な個人情報保護措置が講じられており,本人確
  認情報について漏えいの危険性はないのであり,原告らの上記主張は,抽象的
  な漏えいのおそれを指摘するにすぎない(前記第2,2 (3)ウ参照)。
 3 原告らは,西東京市が住基法3条1項に基づき,都道府県等が保有する本人
  確認情報についても「適正管理義務」を負うと主張するが,以下に述べるとお
  り,原告らの上記主張は失当である。
  (1)住基法3条1項は,市町村長が,住民基本台帳に基づく住民に関する記録
   の管理が適正に行われるように必要な措置を講ずるよう努めるべき責務を負
   う旨を規定しているにすぎず,市町村長から都道府県知事に通知され,更に
   国の機関等に提供されるなどした本人確認情報について,市町村長が管理す
   べき責務を負う旨を規定するものではない。通知・提供後の本人確認情報の
   保護は,都道府県知事や国の機関等がその責任において行うべきものである
   (前記第2 ,2 (4)参照)。
  (2)原告らは,「従前は,住民基本台帳に記録・記載された個人情報は,徹頭
   徹尾,「市町村の庁舎内で管理され,外部への持ち出しは禁止されていた」の
   であり,このような取扱いが「住民基本台帳の原則」であって,住基ネット
   を利用した本人確認情報の通知・提供は,このような原則を前提とする住基
   法が予定している状況とは明らかに異なると主張する(原告ら準備書面(5)
   3ないし6ページ)。
    しかし,住基ネットを利用した本人確認情報の通知・提供は,行政サービ
   スの向上と行政事務の効率化という行政目的を達成するため,改正法に基づ
   き,住基法に明文の根拠を持つ制度として創設されたものであり,これが「住
   民基本台帳の原則」に反するものであると解する余地はない。
  (3)原告らは,行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(以下「行政
   機関個人情報保護法」という。),個人情報の保護に関する法律(以下「個
   人情報保護法」という。),西東京市個人情報保護条例及び住基法36条の
   2の規定において,上記のような「適正管理義務」の存在が重要視されてい
   ると主張する(原告ら準備書面(5)6ないし7ページ)。
    しかし,住基法は,行政機関個人情報保護法及び個人情報保護法における
   個人情報保護に関する一般的な規定に対し,住民基本台帳事務に関連する場
   面における個人情報保護について種々の特則を設けているのであって(住基
   法30条の29ないし30条の43等),行政機関個人情報保護法及び個人
   情報保護法との間では特別法の関係に立つものであり,特別法である住基法
   が一般法に優先して適用されるものである。また,住基法が西東京市個人情
   報保護条例に優先して適用されるものであることも,当該条例の内容からし
   て明らかである。したがって,住基法に基づく本人確認情報の通知・提供等
   の事務が,行政機関個人情報保護法,個人情報保護法及び西東京市個人情報
   保護条例の規定に照らして違法であるなどと解する余地はない。
    そして,住基法36条の2は,住基法に定める事務を実施することを前提
   として,住民票等に記載されている事項又は本人確認情報の適切な管理のた
   めに必要な措置を講ずぺきことを規定したものであり(乙第10号証),住
   基法の規定に基づく本人確認情報の通知・提供が住基法36条の2の規定に
   反し,違法であるなどと解する余地はない。したがって,上記のような諸規
   定において「適正管理義務」の存在が重要視されており,住基法に基づく本
   人確認情報の通知・提供がこれに違反するとの原告らの上記主張は,失当で
   あることが明らかである

第4 結語
   以上のとおり,原告ら準備書面(3)ないし同(6)による変更後の各訴えは,出
  訴期間経過後に提起されたものであるなどの理由により不適法であることが明
  らかであるから,いずれも速やかに却下されるぺきである。仮にそうでないと
  しても,原告ら準備書面(4)及び同(5)における主張はいずれも失当であり,本
  訴各請求は理由がないことが明らかであるから,いずれも速やかに棄却される
  べきである。