平成16年(行ウ)第217号,第250号,第251号 住民票コード付定取消請求事件 原 告 ○○○○ほか2名 被 告 西東京市長 準備書面(4) 平成17年6月29日 東京地方裁判所民事第38部合A1係 御中 被告指定代理人 榮 岳 夫 宮 崎 雅 子 宮 之 下 信 一 石 坂 浩 ニ 下 屋 和 孝 大 川 強 管 野 照 光 内 田 誠 岡 村 保 彦 早 川 礼 成 被告は,本準備書面において,原告ら準備書面(2)第1における主張について認 否するとともに,必要と認める限度で反論を行う。 略称等は,従前の例による。 第1 原告らの主張に対する認否 1 「1 住民票コード」について (1)「(1)はじめに」について 事実に関する主張でなく,認否の限りでない。 (2) 「(2)本人確認情報」について 第1段落は,市町村長が「個人を単位とする住民票を世帯ごとに編成して, 住民基本台帳を作成しなければならない」こと(住基法6条1項),住民票 コードが住民票の記載事項の一つであること(同法7条13号)は認める。 第2段落は,事実に関する主張でなく,認否の限りでない。 第3段落は,@本人確認情報は,住民票に記載されている住基法7条1号 から3号まで,7号及び13号に掲げる事項(住民票の消除を行った場合に は,当該住民票に記載されていたこれらの事項)並びに住民票の記載等に関 する事項で政令で定めるものをいうこと(同法30条の5第1項),Aこの 政令で定めるものとして,住基法施行令30条の5第3号は,住基法7条1 号から3号まで及び7号に掲げる事項(同号に揚げる事項については,住所 とする。)の全部又は一部についての記載の修正を行った場合について,住 民票の記載の修正を行った旨並ぴに転居その他の総務省令で定める記載の修 正の事由及びその事由が生じた年月日を定めており,住基法施行令30条の 5第4号は,住基法7条13号に掲げる事項についての記載の修正を行った 場合について,住民票の記載の修正を行った旨,総務省令で定める記載の修 正の事由及びその事由が生じた年月日並びに当該住民票の記載の修正前に記 載されていた住民票コード(当該住民票に住民票コードが記載されていなか った場合にあっては,その旨)を定めていることは認める。 (3)「(3)住民票コード」について 異なる者の住民票に同一の住民票コードが記載されることがあり得ないこ と,このため,住民票コードを用いることによって,個人識別の誤りを防止 することが容易になることは認めるが,「住民票コードは『検索キー』とし て極めて便利なものだと言える」との主張は否認する。住民票コードを利用 していわゆるデータマッチングを行うことができないことは被告準備書面 (1) 11ページにおいて主張したとおりである。 (4)「(4)行政事務に無限に利用できる住民票コード」について 第1段落は,個別の行政事務ごとに法律又は条例が制定されれば,住基ネ ットを利用した本人確認情報の市町村,都道府県ないし国の機関等への提供 が認められるものであることは認めるが(住基法30条の6,30条の7, 30条の8参照),住民票コードを無限に利用できるとの主張は争う。この 点に関する被告の主張は,後記第2,1において述べるとおりである。 第2段落は,認める。 第3段落は,@一般論として,地方自治体において,ある特定の業務に限 定して,一定の番号を一時的に住民に割り当てて使用することがあり得るこ と,A上記のとおり,個別の行政事務ごとに法律又は条例が制定されれば, 住基ネットを利用した本人確認情報の市町村,都道府県ないし国の機関等ヘ の提供が認められるものであることは認めるが,「本人確認情報によって個 人データを識別管理する行政事務範囲が広がれば,同じ人のデータを多分野 にわたって容易に検索できるようになる」との主張は否認する。住民票コー ドを利用していわゆるデータマッチングを行うことができないことは被告準 備書面(1) 11ページにおいて主張したとおりである。 (5)「(5)まとめ」について 第1段落は,異なる者の住民票に同一の住民票コードが記載されることが あり得ないこと,このため,住民票コードを用いることによって,個人識別 の誤りを防止することが容易になることは認めるが,「個人を容易かつ迅速 に検索できる」との主張については,「同じ人のデータを多分野にわたって 容易に検索できるようになる」という趣旨てあるならば,否認する。住民票 コードを利用していわゆるデータマッチングを行うことができないことは被 告準備書面(1)11ページにおいて主張したとおりである。 第2段落は,地方公共団体である西東京市が「住民の福祉の増進を図るこ とを基本として,地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広 く担うもの」であり(地方自治法1条の2第1項),「その事務を処理する に当たっては,住民の福祉の増進に努めるとともに,最小の経費で最大の効 果を挙げるようにしなければならない」こと(同法2条14項),住基法に 基づく事務が自治事務(地方自治法2条8項)に当たることは認める。 2 「2 住民票コードの特異性」について (1)「(1)一定期間の保存」について 住基法30条の5第3項の規定が市町村長ないし市町村に適用されないこ とは認める。なお,被告が「住民票コードを変更した場合に変更前の住民票 コードが一定期間に限って保存されること」を認めた趣旨は,後記第2,2 (1)において述ぺるとおりである。 (2)「(2)保存期間と個人データの連続性」について いずれも争う。この点に関する被告の主張は,後記第2, 2(2)において 述べるとおりである。 第2 原告らの主張に対する反論 1 住民票コードが行政事務に無限に利用できるとする点について 原告らは,法律又は条例さえ制定すれば,住民票コードを含む本人確認情報 を国の機関や地方公共団体の行政事務などに無限に活用できるようになってい るなどと主張し,このことを問題としている(原告ら準備書面(2)第1,1(4))。 しかし,住基ネットを利用した本人確認情報の国の機関等への提供を認める 旨の法律又は条例は,当然のことながら,国会ないし地方公共団体の議会にお いて,国民ないし住民の意思に基づいて制定されるものであり,国民ないし住 民が必要と認めない限り,当該法律又は条例は制定されず,国の機関等におい て本人確認情報の提供を受けることはできないことになるのであるから,国の 機関等が本人確認情報を恣意的に活用することができるものであるかのような 原告らの上記主張は失当である。 住民票の記載事項は,住基ネットが構築される以前においても,国の機関や 地方公共団体の行政事務に利用されてきたのであって,住基ネットの構築や住 民票コードの存在によって,住民票に記載された情報の利用範囲が大きく広が るなどということはない。また,住民票コードを利用していわゆるデータマッ チングを行うことができないことは被告準備書面(1) 11ページにおいて主張 したとおりである。 2 住民票コードの特異性に関する主張について (1)原告らは,被告が被告準備書面(1)8ページ(原告ら準備書面(2)第1,2 (1)においては7ページ4ないし5行目としているが,8ページ末尾2行目 ないし1行目を指すものと思われる。)において「住民票コードを変更した 場合に変更前の住民票コードが一定期間に限って保存される」と主張した点 について,「これは住基法30条の5第3項で規定している「都道府県知事」 の保存期間のことを指していると思われるが,被告は市であるから,当該規 定の適用はない」と主張する(原告ら準備書面(2)第1, 2(1))。 しかし,被告準備書面(3)第1,2において述べたとおり,住民票コード を変更した場合には,西東京市においても,変更前の住民票コードは,一定 期間が経過した後に消去されることになるものである。 (2)原告らは,「指定情報処理機関においても,住民票の記載,修正が行われ た場合には,記載・修正前の本人確認情報について,通知の日から5年間の 保存期間等が定められている」が,「新たに記載・修正された本人確認情報 に住民票コードおよびその変更履歴が記載されている以上,それより古い本 人確認情報が保存期間経過によって廃棄されたとしても,最新の住民票コー ドおよびその変更履歴として,住民票コードが,いわば”数珠つなぎ”に蓄 積されていくだけである」と主張する(原告ら準備書面(2)第1,2(2))。 しかし,住民票コードの記載の変更が行われた場合に本人確認情報として 通知すべき事項は,「当該住民票の記載の修正前に記載されていた住民票コ ード」に限定されており(住基法30条の5第1項,住基法施行令30条の 5第4号),当該住民票の記載の修正よりも以前に行われた住民票コードの 記載の変更に係る修正前の住民票コードをも通知すべきものとはされていな いのであるから,原告らが主張する「住民票コードの”数珠つなぎ”」が生 じる余地はない。