意見陳述−森てるお

2003.7.10 東京都庁第一本庁舎25階115会議室

議会答弁で明らかになった住基ネットの問題点

森てるお(申立人)

 私のほうから意見を述べさせていただきます。私は森てるおと申します。今いろいろ述べられてきました。ですから、私は少し違った立場から意見を申し述べたいと思います。

 私は、議会の中でさまざまに質問をしてきました。その答弁に対して、その中から明らかになった事柄について意見を述べていきたいと思っています。


●自治事務としての市長の権限はどこへ行ってしまったのか

 この住基ネットの話が出てきてから、恐らく一番最初にだと思いますが、議会外で職員に、一体これはどういう事態なんだという説明を求めました。そのときに、「この事務は国がやっていることですから」という説明をされておりました。ですから、それに対して、少しおかしいのではないかというやりとりをして、議会の中で、住基ネットに関する事務は自治事務ではないかという質問をしました。そして、「そのとおり、自治事務でございます」という答弁をいただいております。では、なぜ自分たちで主体的に判断をし、接続するしないの検討をしないのかというふうに言いましたところ、「接続しないということになれば、これは法律違反だ」という説明がされております。

 先ほど「住基法36条の2」の話が出ましたが、もとより市長は、市民から預かっている市民の個人情報を安全に保持するという責任を負っているわけですが、その安全性を無視したところで法律が決められていくというふうなことに対して、もし、法律違反だからつながなければいけないということになると、自治事務としての市長の権限は一体どこへ行ってしまうのか、こういうことにもなるわけです。


●情報漏洩の損害賠償、推定最高額は27億円

 さて、この安全性の議論ですが、先ほどから何度か出てきておりますが、「西東京市のセキュリティは万全だ」と市長は何度も答弁しております。ですから私は、「西東京市の中でいくら安全が図られたとしても、この情報はすでに西東京市の外に出されている。ここでの安全を市としてどう図るのか」という質疑をしてきました。これに対しては、市のほうは一切言及しておりません。

 これに関連してさまざまな質問をしてきました。その中の1つに、ドメスティックバイオレンスで現在、存否応答拒否というー西東京市にいるかどうかそのことすら答えないというー対応をしているわけです。この対応は一体どうなるのかという質問をしたところ、これに対しては、「住民票の発行等については、問い合わせがあった時点で、ネット上でブロックできるから大丈夫なのだ」ということを答えておりました。しかしこれは、発行を媒介する地方自治体が問い合わせをして初めてわかることです。ですから、この時点でブロックをかける──当然できるわけです。発行しないということができます。しかしながら、すでに地方自治情報センターに移されている情報、こちらのほうをブロックするということは、システム上も事実上もできないということになっているわけですが、このことについては議会の中では一切答弁をしない。何度聞いても答弁をしないというふうな対応がなされております。

 そして、では地方自治情報センターに通知した情報は安全に管理されているのか、市としてそれに対して安全管理の責任を果たせるのかという質問をしているのですが、これに対しては、「地方自治情報センターが適正に管理しているものと考えている」というふうな答弁がなされております。すでに自分たちの手が届かないところに行った情報については相手任せにせざるを得ないという実態が、行政担当者の口からは答弁として出てきております。

 私たちの個人情報が一体だれによって適正に管理されているのか。そして、もし事故があったときに、これにだれが責任をとっていくのか、こういうこともまったく明確になっておりません。「法律に従って事務を行っている」というのが行政の担当者の認識です。ですから、先ほど言われたように、「総務省に言われたからやったんです」という主張をしてくるのは目に見えているわけです。しかながら、これが自治事務である以上、果たして総務省が責任をとれるのでしょうか。私は、とれないというふうに考えております。

 さて、どの程度の損害が考えられるか。ざっとの試算ですが、同列に論じることができるかどうかは別として、先だって京都府宇治市の件で、京都地方裁判所では、個人情報に住民1人当たり1万5000円という値段がついております。この値段を西東京市民すべてに当てはめてみると、もしすべての市民の情報が漏洩すると、その損害賠償額の推定最高額は27億になるわけです。これをだれが負担するのかということについても明らかにされておりません。

 こういった危険性があるということを私は指摘をしてきましたが、行政担当者はこれに対して正面から答えるような答弁を行っておりません。


●市民にメリットは何もない

 さて、自治体の業務ですから、当然、自治法に定められる「最小の経費で最大の効果」というふうなことが求められます。「最小の経費」についてはあとで述べますが、「最大の効果」というところからまず初めに述べたいと思います。

 この住基ネットワークは、国は大いに利用しているということになるわけですが、これは自治事務でありますから、市民にとってプラスがなければいけない。どんなメリットが市民にあるのかということを何度も質問してきました。そうしましたところ、本年8月25日に予定されている第2次稼働が始まれば、全国どこででも住民票を発行してもらうことができる。もう1つは、転出元、転入先、それぞれ1回ずつ役所に行かなければいけないのが、転入先に1度行くだけで済むのだという説明がなされております。しかしながら、これはカードを手に入れたあとの話です。ですから、カードを利用しない人にとってのメリットは何かと聞きましたが、これも残念ながら回答はありません。「カード利用が本年8月25日からできるようになる」という答弁でした。

 いま申しました全国どこでも住民票が取れるということについてですが、そのような事態が私には想定できません。一体どういう事態になったら、行った旅先で住民票を取る必要が出てくるのか。こういうことについても明らかにされておりません。また、転出・転入のときに、転出届を郵送で済ますことが可能だと聞いておりますし、現実にそういう手続も行われております。したがって、それを使えば、もともと一度で済むわけです。2度行かなければならないのが転入の1度で済むようになるのだという、言ってみれば説明自体に瑕疵、誤りがあるということですが、こういった説明もされております。これは総務省もやっていることだと思います。

 これ(住基カード)にメリットをつけるためには、独自の利用をしていくということになります。そのかわりリスクも高くなります。この独自利用についてはどうかという点の質問をしておりますが、これについては、「当面、独自の利用は考えていない」。したがって、いま現在、カードを持って享受すべき利益以外には何もないことが明らかになっております。


●市民の税金をかけて、市は費用対効果も明示できない

 さて、先ほど言いました「最小の経費」という問題について少し意見を述べさせていただきます。「最小の経費で最大の効果を上げる」ということですから、どれぐらい費用がかかって今後どうなっていくのか、市民にとってはたいへん関心の高いところだと思います。そこで、初期費用はどれぐらいかかったのか、これから毎年どれぐらいの費用がかかるのか、こういった資料を行政に対して求め、出されてきております。

 ざっと見積もって初年度が2000万、毎年度2000万ずつかかっていくという回答がありました。しからば、それだけの費用をかけて、費用対効果はいかなるものか明確に答えてもらいたいと言いました。しかしながら、これに対しては、費用対効果が明示できるような事務ではないのだということで明示されておりません。市民が税金を払って、自分たちがどれだけの費用をかけて、どれだけのメリットを享受できるのか。このことすらわからない事務だということを行政担当者は認めております。

 さらに、住基カードの発行についてですが、「1枚について1200円の費用がかかる。このうちの本人負担は500円。残額は、特別地方交付税で措置をされることになっている」という説明がありました。そこで私は、翌年度以降の国負担については約束されているのかと聞きましたが、これは約束がない。だから、打ち切られても文句を言える筋合いのものではないことが明らかになっております。

 さらに、住基カードの発行枚数は3000枚という限定枚数です。そうすると、初年度費用と初期投資の費用で4000万かかるわけです。1人1万円以上の費用が投下されることになりますが、メリットは全然ない。そして、その人たちが仮にメリットを受けたとして、その費用をだれが負担しているのか。それは、全然使いもしない私たちが負担しているということになります。

 したがって、市民が税金を負担して自治体を運営しているという考え方からして、住基ネットの問題点はたいへん大きなものではないか。これからどの程度の費用負担が発生し、市民にどれだけのメリットがあるのかがまったくわからないような事務は、私はもとに戻していくべきだろうと考えております。以上です。