意見陳述−神島由紀子


すべての人の人権を守ることが差別のない社会を生む

神島由紀子

●法律は人間らしく生きるためにある

 私は、自分の生活のなかで感じていることの中からお話しさせていただきます。

 いまから二十五年前に旧保谷市の公民館で開催された「憲法講座」に参加して、はじめて真正面から憲法と向かい合いました。講師は杉原泰雄元一ツ橋大学教授でしたが、その時に話された「憲法は決して遠い存在ではなく、生活のなかにあるのだ」という言葉は、それこそ「眼からうろこが落ちた」という気持ちでとても感動しました。それからは、法律は人間らしく生きるためにあるもので、決して人を縛るためにあるものではないと考え、生活してきました。とくに、すべての人たちの人権を守ることこそが、差別のない平和な社会を生むものだと思っております。

 意見に入るまえに一つ言わせて頂きたいのですが、八月六日にはがきで住民票コードが送られてきました。それは個人宛てではなく、世帯毎に送られてきましたが、これに対しては行政の人権感覚のなさにびっくりしました。とくに、いまDV(ドメスティック・バイオレンス)被害あるいは児童虐待など、家族間であっても住所を知られたくないと考えている人たちがたくさんいるという状況を市はどのように考えているのだろうか。なぜこのような方法をとったのだろうか。聞くところによりますと、経費を削減するためにとかいうことなんですが、憲法で保障されている基本的人権の侵害の恐れがあるこの個人情報を各個人に通達するのに、経費削減という名目でこうも安易に扱われていいものでしょうか。このことからも今回の西東京市の住基ネットに対しての扱いは、人権という観点では一切考えられていないことが明らかだと思います。

●市条例踏みにじる重大な違法行為

 さて、西東京市が私の個人情報に住民コード番号をつけ、住基ネットに接続しましたが、自分の情報がいまどこでどうなっているのかこの間ずっと不安に思っています。私だけではなく、多くの市民は不安を抱えていると思っております。

 私はまず、住基ネットを導入するにあたっての手続きに問題があったのではないかと考え、そのことについて述べさせていただきます。 西東京市が個人情報を住基ネットや東京都に送信するにあたっての決定過程が「西東京市個人情報保護条例」に違反していると考えております。

 「西東京市個人情報保護条例」は、第一条で、「この条例は、個人情報の適正な取扱いについての必要な事項を定め、個人情報を保護するとともに、自己に関する個人情報の開示請求等の権利を保護することにより、市民の基本的人権を擁護することを目的とする」と定めております。また、第三条には、「実施機関は、個人情報の保管等をするときは、市民の基本的人権を尊重するとともに、個人情報の保護を図るために必要な措置を講じなければならない」としております。

 ということは、まず自治体として第一に考えなければいけなかったのは、この住基ネットに接続することは市民の基本的人権をそこなう危険性がないかどうか考えることだと思っております。また、住基ネットによる外部機関への情報提供は、個人情報の漏洩や不正利用の危険性がないかを検討する必要があると思います。第二十五条二項では、個人情報保護審議会は、「この条例によりその権限に属することとされた事項」について、「実施機関の諮問に応じ」、調査活動ができる。また、三項では、「前項に規定するもののほか、審議会は、個人情報の保護に関する重要事項について、必要があると認めるときは実施機関に意見を述べることができる」とあります。このことからも今回の住基ネット接続及び住民票コード付定に関しては、市は当然「個人情報保護審議会」に諮問すべき事項ではなかったかと考えております。

 しかしながら、(〇二年)二月二十六日に開催された「第二回西東京市個人情報保護審議会」において、議題として掲げられているものの、「住民基本台帳ネットワークシステムについて(報告)」とあるのみです。委員から聞いた話によりますと、事務局から資料として、@住民基本台帳ネットワークシステムとは?という簡単な図解されたもの、Aインターネットから取り出した資料が提出されて、事務局は、「あくまでもこれは報告事項で、諮問ではありません」と繰り返し説明されたというように聞いております。これでは「市民の基本的人権・権利としてのプライバシーを守るべき」市の義務は果たされておりません。市民としてはとても納得できない事実です。このことからも西東京市はこの住基ネットに対する対応は、あまりにも安易でずさんきわまりない対応であったといわざるを得ません。

 また、さきほど述べましたように住基ネットによる外部機関への情報提供によって、個人情報の漏洩や不正利用の危険性が大きいと各方面から指摘されているなかで西東京市が住基ネットに接続したことは、西東京市個人情報保護条例の第一条の目的にある「個人情報を保護するとともに、市民の基本的人権を擁護する」という条例の理念、精神を踏みにじるものであり、重大な違法行為と考えております。

●機械が管理するとはいえ、触るのは人間

 私たちの個人情報が、これまでも自分で管理しきれないと感じている市民は多いと思います。たとえば、入学者だけ、成人になる人だけを限定にダイレクトメールが届きますが、それに対してほとんどの市民は不快感、不信感をもった経験をもっています。

 私は、以前市場調査会社で働いたことがありますが、調査対象者を抽出するために市役所に何度か出向きました。窓口にいって、閲覧目的、閲覧対象などを用紙に書き込み、「目的以外に使用しない。プライバシーの侵害や差別行為につながるような目的に使用しない」という主旨の誓約書にサインをすれば、一日中でも住民基本台帳の閲覧をすることができ、個人情報を書き写すことができます。最後に抽出件数分の料金を支払えば誰でも個人情報の収集が可能なのだということが分かりました。本当にびっくりしたわけですが、この台帳は世帯ごとに羅列してあるわけですから、各家庭のプライバシーをのぞくことができ、個人情報を十分読み取れるわけです。いかに仕事で行ったとはいえ、とても不快な思いをしました。これは公に認められたかたちで「個人情報が流出」しているということではないでしょうか。現実にいまあるわけですね。

 それが、今回は、自治体の枠を越えて、コンピューターによって国民総背番号制といわれているように、個人情報が一括管理されるわけです。国や自治体では、専用回線で流すので情報漏洩はないといっていますが、先程若林さんの方から話されましたけど、防衛庁の事件などを考えると私たちは信頼することができないと言わざるをえません。住基ネットは、いかに機械が管理するとはいえ、触るのは人間です。

●市長に責任をとる覚悟はあるのか

 現に十一月一日、全国センターのサーバーに障害が発生したと言われております。その時の対応は、全国の市町村への連絡は大変遅く、ある政令都市の区では、完全に復旧してから通知が到着したということです。これが来年(〇三年)八月以降発生したとすると、広域交付・転入・転出はスムーズにいくということではないと思います。市民サービス向上と言いながら現実にはそういうことはあり得ないと言わざるをえません。

 また、セキュリティに関する重大事故の場合はどうなるのでしょうか。本当に心配です。このような危惧に対して、市としてどう対応されるのでしょうか。

 そして、コンピュータから一回流出した情報がどこに流れ、どう利用されているかを追跡することは不可能だといわれています。この住基ネットの管理は市町村事務となっているわけですので「市の責任、市長の責任」ということです。今日は市長が出席されていませんので大変残念なのですが、市長はその責任をとる覚悟があって、接続されたのかぜひお伺いしたいものと思っております。

 また、今回の住民票コードは、住民票に付番されるわけですから、夫の暴力から逃れている人、住民登録を拒否されている人、日本国籍をもたない人を締め出してしまうことになり、新たな差別を生むことも考えられます。 一方、情報を管理する能力のない子ども、赤ちゃんにまで番号を付けるということは、自分で判断する能力がなくても付いてしまうことでとても危険なことだと思います。

 今回の「住民基本台帳ネットワークシステム」は、「住民サービスの向上と行政事務の効率化」を目的とし、三つの実現事項として、1.市町村の区域を越えた住民基本台帳に関する事務の処理、2.法律で定める国の行政機関等に対する本人確認情報の提供、3.住民基本台帳カード(ICカード)の活用としています。

 しかし、住民にとって、決してサービス向上とはいえません。行政事務の効率化を主目的にして、住民の(国民の)監視体制の強化としか考えられません。

 ぜひ、西東京市におかれましては、市の管理する個人情報の住基ネットへの接続を中止することをご検討くださいますようお願いいたします。