弁明書


審査庁
東京都知事 石 原 慎太郎 様

                        処分庁
                        西東京市長 保 谷 高 範

              弁     明     書

1 事件の表示
 審査請求人、柳田由紀子外494名(以下「審査請求人」という。)が平成15年3月24
日付けで提起した住民基本台帳の一部を改正する法律(平成11年法律第133号。以下
「改正住民基本台帳法」という。)附則第3条の規定に基づく住民票コードの住民票へ
の記載処分及び改正後の住民基本台帳法第30条の5の規定に基づく本人確認情報の東京
都知事への通知についての審査請求

2 弁明の趣旨
(1)「別紙2「行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第14条に規定する法定期間経
 週後になされた審査請求人一覧表」に記載された者については、法定の期間経過後に
 なされたものであるので、審査請求を却下する。」との裁決を求める。
(2)「別紙3「西東京市に住所を有しない審査請求人一覧表」に記載された者について
 は、西東京市に住所を有せず、不適法であるので、審査請求を却下する。」との裁決
 を求める。
(3)「審査請求人(別紙2及び別紙3に記載した者を除く。)が提起した改正後の住民
 基本台帳法第30条の5の規定に基づく本人確認情報の東京都知事への通知の取消し及
 ぴ処分前の状態に回復することを求める審査請求を却下する。」との裁決を求める。
(4)「審査請求人(別紙2及び別紙3に記載した者を除く。)が提起した改正後の住民
 基本台帳法第30条の2及び改正住民基本台帳法附則第3条の規定に基づく住民票コー
 ドの記載及び住民票コードの住民票への記載処分の取消しを求める審査請求を棄却す
 る。」との裁決を求める。

3 処分に至るまでの経緯
(1)平成11年8月12日に改正住民基本台帳法が参議院で可決成立し、同月18日に公布さ
 れ平成14年8月5日に施行された。
(2)処分庁は、平成14年5月6日に改正住民基本台帳法附則第7条の規定に基づき、審
 査請求人(別紙3に記載した者を除く。)の住民票に仮の住民票コードの記載をした。
(3)処分庁は、平成14年5月9日に改正住民基本台帳法附則第7条の規定に基づき、審
 査請求人(別紙3に記載した者を除く。)の仮の本人確認情報を磁気ディスクにより
 東京都知事へ通知した。
(4)処分庁は、平成14年8月5日に改正住民基本台帳法附則第3条の規定に基づき、改
 正後の住民基本台帳法第30条の10第1項第1号の規定により指定情報処理機関から指
 定された、同法第7条第13号に規定する住民票コードのうちから選択した1つの住民
 票コードを審査請求人(別紙3に記載した者を除く。)の住民票に記載し、改正住民
 基本合帳法附則第5条の規定に基づき審査請求人(別紙3に記載した者を除く。)に
 対して、住民票コードを住民票に記載した旨及び住民票コードを書面により郵送で通
 知したが、これらの通知は、その後返送されていない。
(5)平成14年9月17日138名の共同異議申立人の総代3名から前記(4)の処分に対し「
 即時の執行停止の申立てがありヽ同年10月4日459名の追加申立てが総代3名からな
 された
(6)処分庁は、平成14年12月13日当該異議申立てに係る口頭意見陳述を、西東京市田無
 庁舎で行った。
(7)処分庁は、平成15年2月17日付けで異議申立人総代代表神島由紀子に決定書を簡易
 書留で送付した。

4 事実の認否
(1)処分庁が審査請求人(別紙3に記載した者を除く。)の住民票に住民票コードの記
 載をしたことは認めるが、国が審査請求人を統一的に管理する手段を用意するもの
 で、国家による国民への管理強化につながることについては否認する。
(2)審査請求人(別紙3に記載した者を除く。)の住民票を処分庁が住民基本台帳ネッ
 トワークシステム(以下「住基ネット」という。)に接続をしたことは認めるが、審
 査請求人(別紙3に記載した者を除く。)のプライバシーの権利と自己情報のコント
 ロール権を侵害することについては否認する。
(3)住基ネットの実施条件である個人情報保護法が現在も未成立であることは認める
 が、8月5日の住基ネットの稼働は違法であることについては否認する。
(4)西東京市議会が平成14年6月24日に「住基ネットの8月稼働延期を求める意見書」
 を議決し、関係大臣に送付したことは認める。
(5)国の個人情報保護体制が不十分で、審査請求人(別紙3に記載した者を除く。)の
 個人情報が漏えいする恐れがあるにもかかわらず、個人情報を処分庁が東京都知事に
 通知したことは改正後の住民基本台帳法第36条の2の規定に定められた「安全確保義
 務」に違反していることについては否認する。
(6)住基ネットの稼働が違法であるにもかかわらず、西東京市長が住基ネットに接続し
 たのは、西東京市個人情報保護条例に違反することについては否認する。

5 審査請求人の主張に対する処分庁の意見
(1)2(1)について
  別紙2に記載した者は、処分庁に異議申立てをせず直接東京都知事に審査請求をし
 た者である。処分庁はこれらの者に対し、平成14年8月5日に住民票コードを住民票
 に記載した旨及び住民票コードを書面により郵送で通知したものである。とすれ
 ぱ、審査請求人(別紙3に記載した者を除く。)には、少なくとも、平成14年8月9
 日に到達している。その翌日から起算して60日以内となると、平成14年10月8日まで
 に東京都知事に審査請求をしなけれぱならないことになる。本請求は平成15年3月24
 日になされているのであるから、法定の期間経週後になされた違法な請求である。
(2)2(2)について
  別紙3に記載した62番、246番は平成14年10月4日に提起した「住基ネット接続及
 ぴ住民票コード付定に対する異議申立書(その2)」で共同異議申立人として申立て
 をしたが、施行日に、西東京市の住民基本台帳に記録されておらず、処分庁は、この
 者の住民票に住民票コードの記載や東京都知事に住基ネットを接続し、個人情報を通
 知したことがない。よって、本件異議申立てを却下するとの決定をして通知した。こ
 れらのことから審査請求は不適法である。また、63番、64番については、共同異議申
 立人として申立てをしておらず、さらに、西東京市の住民基本台帳に記録されていな
 いので、不適法である。
(3)2(3)について
  改正後の住民基本台帳法第30条の5には、市町村長は、住民票の記載、消除又は氏
 名、出生の年月日、男女の別、住所及び住民票コードの全部若しくは一部についての
 記載の修正を行った場合には、当該住民票の記載等に係る本人確認情報を電気通信回
 線を通じて都道府県知事に通知する旨規定している。処分庁はこの規定に基づき通知
 したものであり、取消しを求める審査請求は不適法である。また、東京都知事に通知
 した本人確認情報を取り消し、処分前の状態に回復することについて、処分庁には都
 道府県知事、指定情報処理機関が保有している本人確認情報を回復したり削除する権
 限はない。
(4)2(4)について
  改正住民基本台帳法附則第3条には、「施行日に、この法律の施行の際現に住民基
 本台帳に記録されている者に係る住民票に新法第30条の7第1項の規定により都道府
 県知事から指定された新法第7条第13号に規定する住民票コードのうちから選択する
 いずれか一の住民票コードを記載するものとする。」と規定している。審査請求人
 (別紙3に記載した者を除く。)は施行日に住民基本台帳法に記録されている者であ
 り、本件処分は同条の規定を適用し処分したもので、改正後の住民基本台帳法第30条
 の2の規定に基づく処分の取消しを求める審査請求は理由がない。
(5)4の(1)について
  住民票コードの記載は、改正後の住民基本台帳法第7条第13号の規定に基づき義務
 付けられているものである.住基ネットは、地方公共団体共同のシステムであり国家
 が一元的に管理するシステムではない。保有される情報は本人確認のための氏名、住
 所、性別、生年月日の4情報であり、国の機関等への情報提供は、住民の居住関係の
 確認のための求めがあったときに限定し、個々の目的ごとに法律上の根拠が必要であ
 り、目的外利用を禁止し、一元的に収集・管理することを認めていない。
  これらのことから、国が統一的に管理するための手段で、国家による国民への管理
 強化であるとは認められない。
(6)4の(2)について
  平成11年8月18日改正住民基本台帳法が公布され、平成14年8月5日施行された。
  この改正は、全国の市町村で管理している「住民基本台帳」の情報を市町村と都道
 府県、国の機関等が専用の回線で結び全国共通の本人確認ができる仕組みを構築しよ
 うとするものである。その際、住民一人一人に11ケタの番号を付け全国の自治体や国
 の機関がこの番号を本人確認に利用するものである。改正後の住民基本台帳法第7条
 第13号に規定している住民票コードの記載をしたときや、同法第30条の5の規定に基
 づく住民票に記載された氏名、出生の年月日、男女の別、住所の記載の修正を行った
 ときは、当該記載等に係る本人確認情報を電気通信回線により東京都知事に通知する
 ものと規定されているので、住基ネットの接続は必要不可欠である。
  本人確認情報の保護措置として、改正後の住民基本台帳法第30条の29から第30条の
 32及び第36条の2において、システムの運営主体である市町村等における本人確認情
 報の保護措置が規定されている。また、同法第30条の33から第30条の36において
 は、受領者である国の機関又は法人等における本人確認情報の保護措置も規定されて
 いる。さらに、同法第30条の37から第30条の41及び第36条の3において、自己の本人
 確認情報の開示等及び本人確認情報に関する事務等の実施に関する苦情の処理につい
 て規定している。
  西東京市においては、西東京市個人情報保護条例及び西東京市情報セキュリティポ
 リシー(西東京市情報セキュリティ基本方針・西東京市情報セキュリティ対策基
 準・西東京市情報セキュリティ実施基準)により、本人確認情報の安全確保に必要な
 保護措置を講じ対応している。
  以上のように、必要な保護措置が講じられているので、接続をしたからと言ってプ
 ライパシーの権利や自己情報のコントロール権を侵害するものではない。
(7)4の(3)について
  改正住民基本台帳法附則第1条第2項に「この法律の施行に当たっては、政府
 は、個人情報の保護に万全を期するため、速やかに、所要の措置を講ずるものとす
 る。」と規定し、政府は「個人情報の保護に関する法律案」を国会に提出したが施行
 期日までに成立しない状況が生じた。西東京市議会も内閣総理大臣・総務大臣あてに
 稼働延期を求める意見書を送付したが、政府は国会に個人情報の保護法案を成立させ
 ていなくとも「所要の措置」は講じたとし、平成14年8月5日の施行期日は変更され
 ず実施された.西東京市は、国会において制定された改正住民基本台帳法に基づき住
 基ネットを稼働したもので違法・不当ではない。
(8)4の(5)について
  改正後の住民基本台帳法第36条の2は、住民票に記載されている事項の安全確保に
 ついて規定しているものである。住民票又は戸籍の附票に関する事務の処理に当たっ
 ては、記載されている事項の漏えい、滅失及びき損の防止めために適切な措置を講じ
 なけれぱならないとしている。その適切な保護措置として、制度面では、@本人確認
 情報の提供先や利用目的を法律により具体的に限定。A関係職員に対する「安全確保
 措置」及び「秘密保持」の義務付け。B提出先が本人確認情報を目的外利用すること
 の禁止。C民間部門の住民票コードの利用の禁止。システム面では、@ICカードや
 暗証番号によるコンピュータ操作者の確認。A蓄積されているデータヘの接続制限。
 B操作者の履歴管理。C通信相手となるコンピュータとの相互認証。D専用回線上の
 本人確認情報の暗号化。運用面では、@情報保護管理者の設置。A安全確保のための
 対策会議の開催。B監査等の管理体制に関する措置等適切な措置を講じているの
 で、安全確保義務に違反しているとの主張には理由がない。
(9)4の(6)について
  住基ネットの稼働が適法なものであることは、前記5審査請求人の主張に対する処
 分庁の意見(6)に述べたとおりである。それに、西東京市個人情報保護条例第10条第
 1項で「実施機関は、個人情報を第8条第1項に規定する利用目的の範囲を超えて当
 該実施機関内部若しくは実施機関相互間で利用し、又は市以外のものに提供してはな
 らない。」としているが、同条第2項で「前項の規定にかかわらず、実施機関は、次
 の各号のいずれかに該当するときは、目的外利用又は外部提供をすることができる。」
 とし、同項第2号で「法令の定めがあるとき。」と規定している。
  今般、住基ネットに接続したのは、個人情報を東京都知事に通知するために、改正
 後の住民基本台帳法第30条の5の規定により通知したもので、このことは、同条例第
 10条第2項第2号に該当する外部提供であり、西東京市個人情報保護条例に違反して
 いない。      l
(10)憲法前文で謳われている平和的生存権、憲法で保障された人格権、個人の尊厳と幸
 福追及権を侵害するとの主張について
  平成11年8月12日に改正住民基本台帳法が参議院で可決成立し、同月18日に公布さ
 れた。この改正は、住民票の記載事項として新たに住民票コードを加え、それを基に
 市町村の区域を超えた住民基本台帳に関する事務の処理や国の機関等に対する本人確
 認情報の提供を行うことを目的として平成14年8月5日から施行されているものであ
 る。
  処分庁が審査請求人(別紙3に記載した者を除く)の住民票に住民票コードの記載
 をしたのは、住民基本台帳法第5条で「市町村は、住民基本台帳を備え、その住民に
 つき、第7条に規定する事項を記録するものとする。」と規定し、改正後の住民基本
 台帳法第7条13号において「住民票コード」を記載するように定められたことによる
 ものである。今般、処分庁が審査請求人(別紙3に記載した者を除く)の住民基本台
 帳に住民票コードの記載をしたり、住基ネットに接続したのは、国会において制定さ
 れた法律に基づいて行った処分であり、憲法前文で謳われている平和的生存権、憲法
 で保障された人格権、個人の尊厳と幸福追及権を侵害するとの主張がなされても、国
 会が制定した法律に基づいて事務を執行する処分庁としては、改正された住民基本台
 帳法の合憲性について判断するところではない。

6 添付書類
 (1)平成14年9月17日付け住基ネット接続及び住民票コード付定に対する異議申立書
   (その1)の写し
 (2)平成14年10月4日付け住基ネット接続及び住民票コード付定に対する異議申立書
   (その2)の写し
 (3)決定書の写し(共同異議申立人目録その1・その2を含む。)
 (4)西東京市個人情報保護条例及び施行規則
 (5)西東京市情報セキュリティポリシー(西東京市情報セキュリティ基本方針、西東
   京市住民基本台帳ネットワークシステムセキュリティ対策基準、西東京市情報セ
   キュリティ対策基準)
 (6)口頭意見陳述の開催通知の写し及び口頭意見陳述筆記録の写し