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◆反住基ネット ニュース ライブラリー
Document 埼玉県/ 所沢市/ 中止請求・個人情報保護・自己情報コントロール権 20021220-54
02年12月19日 所沢市個人情報保護審査会 補佐人意見陳述資料 住民基本台帳法第三十条の五のみを根拠にした非訂正決定はあり得ない |
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2002.12.19 所沢市個人情報保護審査会 意見陳述資料
吉村英二(日本消費者連盟・所沢市民) 【1】住民基本台帳法第三十条の五のみを根拠にした非訂正決定はあり得ない さて所沢市は、今回の中止請求に対して、外部提供については「所沢市個人情報保護条例第7条第2項第2号の法令等に定めがあるときに該当」するとして、非訂正の決定をした。つまり、「国法で決まっているから、所沢市にはどうにもできない」という判断を下したということである。果たしてそうであろうか。 住民基本台帳法には、都道府県知事への本人確認情報の通知を定めた第三十条の五以外にも、次のような規定がある。 ○第三条 市町村長は、常に、住民基本台帳を整備し、住民に関する正確な記録が行われるように努めるとともに、住民に関する記録の管理が適正に行われるように必要な措置を講ずるよう努めなければならない。 ○第三十六条の二 市町村長は、住民基本台帳又は戸籍の附票に関する事務の処理に当たつては、住民票又は戸籍の附票に記載されている事項の漏えい、滅失及びき損の防止その他の住民票又は戸籍の附票に記載されている事項の適切な管理のために必要な措置を講じなければならない。 ここで言われているのは、市町村長の適正管理義務である。すなわち、市町村長には管理が適正かどうか判断する義務があるということである。ということは、単に同法第三十条の五に基づいて住民基本台帳ネットワーク・システム(以下、住基ネット)へ個人情報を提供するだけでなく、その提供の是非についても判断「しなければならない」と定められている。言い換えるなら、第三十条の五のみを理由に住基ネットへ個人情報を提供しては「ならない」と書かれているのである。 このような法の規定に照らし合わせたとき、今回の中止請求に対する決定は、はなはだ説明不足と言わざるを得ない。市の行う住基ネットへの個人情報の提供について、同法第三条または第三十六条の二に照らし合わせて、何を根拠にそのような判断を下したのかが示されるべきである。 また、以下のような規定も住民基本台帳法には存在する。 ○第三条第4項 何人も、第十一条第一項に規定する住民基本台帳の一部の写しの閲覧又は住民票の写し、住民票に記載をした事項に関する証明書、戸籍の附票の写しその他のこの法律の規定により交付される書類の交付により知り得た事項を使用するに当たつて、個人の基本的人権を尊重するよう努めなければならない。 上記の条文から類推するに、住民基本台帳に記載された個人情報の取り扱いに関しては、「個人の基本的人権を尊重するよう努めなければならない」わけであるから、その権利を制限するにあたっては公益性が十分に明らかにされなければならない。ということは、市は管理が適正であるとする判断の根拠とともに、住基ネットそのものの公益性も同時に示さなければならないわけである。 以上の理由から、上記の事項が示されていない今回の決定は、根拠がないと言わざるを得ない。 【2】住基ネットは「漏洩」を目的としたシステム では、住基ネットは個人の基本的人権が尊重され、適正な管理が行われる仕組みであろうか。ここで言う「基本的人権の尊重」と「適正な管理」とは、すなわち個人情報保護のことを言う。 住基ネット実施開始の8月5日を前後して、マスコミ等において「住基ネットは個人情報保護が万全ではないから実施を見合わせるべき」という論評が目立った。しかしながら、このような指摘は、個人情報保護についての認識に本質的な誤りがあると言わざるを得ない。 個人情報保護とは、何を「保護」するのか。それは、取りも直さず個人情報に関する本人の「権利」、すなわち本人の自己決定権を「保護」することである。これを規定するのがいわゆる「自己情報コントロール権」であり、いつ・誰に・どの程度、自らの情報を提供するかは本人に決定権があるという考え方である。この概念は、欧米諸国ではすでに定着しており、EUのデータ保護指令にも見られるとともに、これを基礎とした各種の法制が行われている。また日本においても、憲法における人格権がこれを保障しているとする法学者は多い。このことは、住民基本台帳法自体に「基本的人権の尊重」が規定されていることからしても明らかである。所沢市の個人情報保護条例も、「個人情報の開示及び訂正等を請求する権利を明らかにする」という目的からして、一部この考え方を取り入れていると言えよう。 この考え方に立ったとき、個人情報の「漏洩」とは、単純に所定の機関や部署、担当者等以外に個人情報が漏れることを差すのではなく、本人が了解していない範囲で個人情報が取り扱われることを差し示すものである。本人が了解していない場合、いくら所定の機関や部署、担当者等以外に情報が漏れていないとしても、それは「漏洩」状態であり、そのような個人情報に関する自己決定権が侵害された状態を「漏洩」と呼ぶのである。所定の機関や部署、担当者等以外に情報が漏れるか否かという問題は、むしろ「セキュリティ」の問題として議論されるべきである。 私たち所沢市民は、住基ネットの実施に際して市や県、国等から、住民基本台帳に記載された自らの個人情報を提供・利用することについて同意を求められたことはなく、もちろん同意した憶えもない。そもそも住民基本台帳法にそのような規定はなく、住基ネットにも本人の同意を得る仕組みはない。ということは、本人の自己決定権を侵害しているという意味で、住基ネット自体が実は「漏洩」を前提とし「漏洩」を目的としたシステムなのであり、個人情報保護が万全な住基ネットなどとはそもそもあり得ない。 【3】住基ネットは公益なき権利制限 では、もう一方の非訂正決定の根拠となるべき、住基ネットの公益性についてはどうであろうか。 所沢市においてはすでに詳細な検討を済ませていることと思われるためここでは詳しく触れないが、@〜Bの住民メリットについては、現行と同等か、場合によっては現行より利便性が低下する結果をもたらすものであるのは明らかだ。行政側のメリットについては、「毎年3500万人の年金受給者の現況届のうち、2500万件程度が省略できる」「住民票の写しは当面500万枚程度、電子政府関連法が成立すれば、2500万枚程度減らせる」という程度の試算しか立っておらず、具体性に乏しい。しかも、これは中央省庁もしくは自治体全体に関するものであり、一自治体や所沢市に限定して見たとき、それほどのメリットがあるのか、はなはだ疑わしいと言わざるを得ない。「むしろ仕事が増えるだけ」という声を多くの自治体職員から聞いている。 さらにここで留意すべきは、上記@〜Bのサービスは、来年8月より交付開始が予定されている「住基カード」の交付を受けたもののみが得られる「利益」である。交付を受けない者は、住基ネットからの受益はまったくない。ちなみに、総務省が構想する電子政府・電子自治体についても、その利益を受けるには住基カードの交付を受けることが前提である。つまり、電子政府・電子自治体においても、住基カードの交付を受けない者にとっての受益はないのである。 このように見ていくと、個人情報に関する自己決定権を制限してまでも実施すべき公益性は、住基ネットにはまったくないと言っても過言ではなかろう。つまり、住基ネットとは、公益なき権利制限、すなわち単なる権利侵害の仕組み以外の何ものでもない。 【4】住基ネットへの外部提供は、少なくとも選択制を導入すべき 以上の理由から、今回の非訂正決定は根拠がなく、中止請求は受け入れられるべきである。 さらに言えば、もし所沢市として今後も住基ネットへの参加と他の行政機関等への個人情報の提供を継続するのであれば、少なくとも全市民個人個人に住基ネットへの個人情報提供について許可を求め、同意した市民の個人情報のみを提供するのでなければ、市民への権利侵害に所沢市も荷担することになると言えよう。前述したように公益性と個人の権利を秤にかけるなら、本来であれば市全体として不参加とするのが望ましい。 同時に、これを機会に住民基本台帳の原則開示などについても、再検討すべきであることを申し添えておく。 所沢市個人情報保護条例に謳われた「公正で信頼される市政の推進」を期待する。 |